自筆証書遺言と公正証書遺言
■自筆証書遺言の作成方法
自筆証書遺言は、遺言者(遺言する人)が手書きで作成する遺言です。
自筆証書遺言が法律上の効力をもつためには、①遺言全文、②日付、③氏名を遺言者が手書きで記載し、④押印しなくてはなりません(民法968条1項)。
しかし、2019年1月からは、①の要件の例外が認められており、財産目録についてはパソコン等により作成・添付することができるとされています。
その場合には、添付した目録の毎葉に署名・押印する必要があります(968条2項)。
自筆証書遺言の保管方法については民法上の規定がなく、自宅で保管するのが一般的だったため、紛失や隠匿・改ざんの危険が指摘されていました。
そこで、2020年7月からは、自筆証書遺言保管制度が開始しています。
これにより、遺言者が申し立てれば、自筆証書遺言を法務局で安全に保管できるようになりました。
■公正証書遺言の作成方法
公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公文書のことをいいます。そして、公正証書の形で作成する遺言のことを、公正証書遺言といいます。
公正証書遺言が法律上の効力を持つためには、①証人2人以上の立会いのもと、②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、③公証人がこれを筆記して読み聞かせ、④遺言者と証人が筆記を確認の上で署名押印し、④公証人が所定の方式で作成したことを付記して署名押印することが必要となります(969条)。
具体的な手続きとしては、遺言内容について公証人との打ち合わせを行い、原案を作成した上で、公証役場での手続きを行うことになります。
公証人との打ち合わせでは、遺言者の伝えた相続方針をもとに公証人が原案を作成し、これを適宜修正するという流れになります。
完成した公正証書遺言は、公証役場で厳重に管理されます。
■自筆証書遺言と公正証書遺言のメリット・デメリット
〇作成にかかるコスト
自筆証書遺言はいつでもどこでも作成でき、特段の手続も必要ありません。また、作成にあたって費用がかかることもありません。
このように、作成にかかるコストが低いことは、自筆証書遺言のメリットといえます。
これに対して、公正証書遺言の作成にあたっては公証人との打ち合わせや公証役場での手続きが必要となるため、自筆証書遺言と比べて時間や手間がかかります。また、公正証書を作成するにあたっては、相続財産の金額に応じて2万円~5万円程度の手数料が発生します。
こうした点は、公正証書遺言のデメリットといえます。
〇法的効力が生じる確実性
自筆証書遺言は、遺言者一人でいつでも作成できる反面、日付の記載漏れ等の不備に気が付きにくく、遺言が無効になるリスクが高いというデメリットがあります。
こうしたリスクを回避するため、自筆証書遺言の方式で遺言書を作成する場合であっても、専門家のチェックを受けるという方法もあります。
これに対し、公正証書遺言は公証人が作成するため、法律要件の不備が起きる心配はほとんどありません。
〇保管上の安全性
自筆証書遺言では、保管方法の定めがないため、紛失や隠匿・改ざんの危険があります。
こうしたリスクに対処する方法としては、金庫に入れるなどして厳重に管理することのほか、自筆証書遺言保管制度を利用することが挙げられます。
公正証書遺言は公証役場で保管されるため、紛失等の危険がほとんどなく、保管の点でも安心感があります。
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