公正証書遺言の内容に納得いかない場合の対処法とは
被相続人が死亡した場合、被相続人が死亡時に有していた一切の権利義務が、相続人に包括的に承継されます。
このことを相続といいます。
相続人となる者や、その相続の割合については、民法に規定がありますが、被相続人の遺産をどのように相続させるのかについては、被相続人の意思を尊重するべく、有効な遺言の作成があれば、原則として遺言にしたがって相続の手続きが行われます。
遺言の作成方法の中には、公正証書遺言という形で作成する方法があります。
公正証書遺言は、私人からの嘱託によって公証人がその権限に基づいて作成した遺言のことをいいます。
このページでは、公正証書遺言に納得のいかない内容の記載がある場合の対処法についてご紹介します。
遺言の内容に納得いかない場合の対処法
①公正証書遺言の無効の主張
公正証書遺言は無効となりにくい類型の遺言ですが、以下のような場合には、公正証書遺言が無効となる場合があります。
・証人に欠格事由があった
公正証書遺言は、公正証書として作成される厳格な書面であるため、証人2名以上が必要です。
これらの証人は、「未成年」「推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族」「公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人」であってはならず、これらのものが証人になった場合には、公正証書は無効となり得ます。
・遺言者に遺言能力が不存在であったこと
遺言は、15歳に達していないとすることができません。
また、遺言の内容を適切に理解する能力がない場合も、遺言能力がない者と判断され得ます。
・遺言者が遺言の趣旨を公証人に伝えなかった
遺言者は遺言の趣旨を公証人に口授しなければならないところ、口授を欠くと、公正証書は無効とされます。
・遺言内容が意思に反するものであった
遺言の内容が、本来残したかった遺言の内容と一致しない場合には、公正証書遺言は無効となり得ます。
もっとも、本来残したかった意思がどのようなものであったかは、客観的に推認せざるを得ないため、証拠が必要です。
・公序良俗違反
民法の一般原則として、公序良俗に反する内容の公正証書遺言は無効となります。
②相続人や受遺者の全員で遺産分割協議を行う
被相続人の意思を尊重するという考え方に立つとしても、結局は今生きている相続人や受遺者たち全員が納得し、それを望んでいるのであれば、相続人や受遺者の決定に従うべきであるといえます。
そのため、遺言と異なる遺産分割協議も、一定の条件の下、その効力が認められる場合があります。
一定に条件としては以下のものが挙げられます。
・遺産分割協議が遺言で禁止されていないこと
遺言において、最大5年間、遺産分割協議を禁止することができます。
かかる間に上記のような遺産分割協議を行っても、効力は認められません。
・遺言執行者が指定されている場合においては、同人が同意していること
この点について、遺言執行者の同意がなくても、遺言と異なる内容の遺産分割協議の効力を認めるべきかどうか、見解が分かれています。
見解が分かれている以上、実務上同意を得ることが無難といえます。
一方の見解は、遺言執行者はあくまでも遺言内容の実現に努めるべきであるので、遺言内容の実現を妨げる遺産分割協議については、その実現者たる執行者の同意を求めるべきというものです。
他方の見解は、相続人らの合意によって、相続人らが取得した権利を事後的に変動させたものと考えて、執行者の同意のない遺言であっても有効とする見解です。
③遺留分侵害額請求権
兄弟姉妹以外の法定相続人には、遺留分が当てられています。
これは、遺言でも動かすことができない相続分のことをいい、これを侵害された場合には、侵害した相続人や受遺者に遺留分に相当する金銭を請求することができます。
相続にお困りの方は今西法律事務所までご相談ください
公正証書遺言には強い効果と信用が向けられるものの、その内容が不当な手続きによって成立した、あるいは内容が不当であるため、納得できないという場合があります。
そのような場合には、一定の手続きを経て、公正証書遺言を無効と主張したり、一部回復したりすることができますが、これらには専門的な知識や経験が必要です。
今西法律事務所では相続にかかわるご相談を承っております。
お困りの方は、お気軽にお問い合わせください。初回相談は無料で承っております。
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